黄金則を身につけよう。戦略的にあなたを成長させる時間管理方法

仕事の効率化や知的生産について情報発信を続けている、堀 正岳さんの連載をお届けします。

堀さんは研究者として働きながら、どうしたら仕事の質を高められるか、を考え続け、個人ブログ『Lifehacking.jp』を通してアウトプットし、個人の生産性について考える人をインスパイアしてきました。そのテーマは「人生を変える小さな習慣」。かのドラッカーも、仕事の成果を支えるのは「習慣である」と言い切っています。堀さん的習慣術、第一回のテーマは、時間管理=「時間の感覚を身につけること」についてです。

これから社会人としての第一歩を踏み出そうとしている皆さんにも、ぜひ役立ててもらいたい内容です。

キャリアを積み始めたばかりの若いビジネスマンや若手研究者にとって、一日も早く成果を出し、業界で通用する人材に早くなりたい、という気持ちは人一倍強いと思います。

「一人前として見られたい」というそのやる気が空回りして、周囲から「意識が高い」と揶揄された苦い経験をもっているひとも多いのではないでしょうか?

経験や実績は一日で出来上がるものではありません。しかし、無理な背伸びをせずとも、いつのまにか身につき、成長を実感するときがくるような、小さな毎日の習慣づくりはすぐに始めることができます。

本連載では、「『正しい』意識の高めかた」と題して、キャリアの駆け出しにある人にむけて、着実な経験を身につけるための仕事術と、志を実力に変えていくためのヒントをお届けします。

今回は、時間管理の習慣術の一つ、「時間の感覚を身につけること」についてです。

 

小さな時間管理を意識しよう

正しい意識の高めかた「小さな時間管理」

「私には、お金も、才能も、後ろ盾も、何もない」そういう人でも一つだけもっているのが、時間です。つまり、スタートラインに立っている人が全員平等に持っているのが時間なのです。

大きな成長を遂げるには、大きな仕事や、大きな時間の使いかたを考えなければいけないと思いがちですが、実際は、毎日の小さな時間の使いかたの中にこそ成長の種は隠れています。

そのヒントになるのが、時間の「テンプレート」と「ペース」の考えかたです。今回はカレンダーの使い方を例にとって、理想的な時間のテンプレートを探す方法について見ていきましょう。

 

毎週、なにに何時間を使っているか記録する

私たちの毎日は、その大半が繰り返しでできています。毎日さまざまな仕事で飛び回っているつもりでも、いつ起床し、いつ眠り、どの程度食事や生活に時間をあてているかは、意識しないうちに固定化しているのです。これが、テンプレートです。テンプレートとは、もともと金属や木などの素材を切るときに使う型板のことです。テンプレートのとおりに素材を切れば、いつも理想の形をとりだせるのと同じように、時間のテンプレートはあなたが毎日を理想に近い形で過ごすための型になります。

ためしに、カレンダーを取り出して、一週間の記録をとってみてください。あなたはいつ起きて、いつ眠り、食事にはどのくらいの時間をかけ、余暇には何をしていましたか?

また、仕事における大事なポイントとして、「1時間でやろう」と思っていた仕事に対して、実際にはどのくらいの時間を使ったか? メールのチェックなどといった毎日おこなう行動をいつ、何回おこなったか? も記録してみましょう。

これは、自分の仕事の見積もりの甘さを責めるための記録ではありません。むしろ、無意識になっていた時間の使いかたを意識するための手続きなのです。

毎週本を読むつもりでも、実際に割り当てているのは15分なら、その本は読み進まず、目標はいっこうに達成されません。あるいは、1時間のつもりで始めたことが4時間かかっているなら、計画の仕方に無理が生じていることが認識できます。

こうして一週間の時間の使いかたを意識し、そこに小さな変更を加えて新しいテンプレートをつくっていくのです。

 

カレンダーアプリの予定は30分単位に

予定の管理をおこなうのに、手帳やパソコン・スマートフォンのカレンダーアプリを使っている人は多いのではないでしょうか。カレンダーは予定を書き込んで覚えておくためだけではなく、意識して時間を使うためのテンプレートを練る場所として使えます。

そこで即効性のある習慣として、カレンダーに入力する予定を1時間単位ではなく、30分単位にするというものがあります。

漫然と予定を立てていると「1時からこの仕事を、2時にはこの作業を」という具合に1時間単位で一日をとらえてしまいます。これを強制的に「1時から1時半までこの仕事」という具合にとらえるだけでも、時間への意識がきめ細かくなるのです。

慣れてきたら、15分単位、5分単位と刻んでみるのもいいでしょう。次第に、メールのように頻繁に発生する作業には細かく時間を刻んで処理が可能、資料作成のように創造的な作業には45分ほどの単位が必要といった、あなたの時間の物差しができてくるのです。

カレンダーアプリを使っている人は、仕事、家庭、余暇、雑用のカレンダーを分けて管理することもおすすめです。それぞれに色を割り当てるだけで、互いのバランスをひと目でみることができるからです。

読書や、学習といった、ともすれば後回しにされてしまいがちな時間も個別にカレンダーを用意しておくだけで、時間を割り当てているかどうかを可視化できます。まずは可視化して、時間の使いかたへの小さな改善点を拾っていくことで、テンプレートは次第にあなたの一部になっていきます。

 

時間の使いかたの黄金則を味方につける

正しい意識の高めかた「時間管理の黄金則」

テンプレートが意識できてきたら、普段の生活のなかで時間の使いかたをさらにチューニングしていきます。このとき、利用できる原則が2つあります。

一つは、80:20の法則として有名な「パレートの法則」です。イタリアの経済学者、ヴィルフレド・パレートが提唱したこの考えかたは、さまざまな場面で活用でき、時間管理でいうなら「ある仕事の成果の8割は、費やした時間の2割が生み出している」と言い換えることができます。

みなさんにも覚えがあると思いますが、10時間の作業の成果は、集中していたり、調子が良かった2割の部分が基本的に生み出していて、残りの8時間は仕上げや、細かい部分にあてられていたりするものです。

この法則を逆手に取るなら、2時間分の集中力を要求する仕事には、少なくとも数時間の余白時間をつけて見積もらないといけない、というようにも使うことができます。

これは怠けているのではなく、機械ではない私たちの知的作業はどうしてもこうした緩急で構成されているので、最初からそれを計算にいれておくということなのです。

二つ目の法則は、このパレートの法則を味方につけるためのもので、作業を「トップ・ヘビー¹」に配置するというものです。

¹上部が重いこと。

たとえば、1週間後が締め切りならば、最初の2日に最も重要な部分に手を付けることによって、最後の部分は切り捨ててもクオリティに本質的な差がでないようにしておくのです。

こうした原則を念頭に、カレンダー上で時間割り当てを構成していくと、頂上の見えない登山のようにみえた仕事が、ペースを守りながら平地を走るマラソンのようにみえてきます。

マラソンも大変であることには違いがありません。しかし、闇雲にダッシュしても、ゴールには着かないことが分かっていますので、自然と緩急を考えるようになるのです。

 

テンプレートは磨かれていく

私もキャリアを積み始めた頃は、「この仕事が終わるまでは」と、出口のみえないトンネルを走るように、毎日夜遅くまで作業をしていたことがありました。

これは、あなたに実力や才能がないからというよりも、何にどれくらいの時間を使うと、どのくらいのアウトプットができるのかが最初はわからないからです。

自分のペースの遅さに苛立ちをおぼえたり、見積もりの甘さに後悔したりといったことも、時間の物差しができる前のこの時期では自然なことだといえます。そうしたときは、まずは落ち着いてカレンダーと向き合い、時間の使いかたを意識してみるところから始めましょう。

理想の時間のテンプレートを探しながら毎日を繰り返すうちに、あなたの時間に対する精度は次第に高まり、時間の使いかたは研ぎ澄まされていくことでしょう。

さて、次回は、もう一つの時間管理のテーマである、「ペースの生み出しかた」について見ていこうと思います。

※本記事の内容は筆者個人の知識と経験に基づくものであり、運営元の意見を代表するものではありません。

次の記事はこちら:
集中力のピークに雑用をしていませんか?才能を活かす時間術

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