フューチャリストに聞いた、未来を明るく灯す方法

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この意志は、これまでのサイエンスシフトとまったく同じものです。そこで、そのシンボルキャラクターを務めるフューチャリスト・小川和也さんに、未来をどう考えているかを聞きました。キーワードは、意外とも思える「あたたかさ」です。

*本記事はシリーズ「新時代を生きる」の一記事です。このほかのサイエンスシフトなりの未来への取り組みは、タグ「新時代を生きる」からご覧ください。

取材協力:

小川和也さん

アントレプレナーとして未来を切りひらき、未来のあり方を提言するフューチャリストの顔も持つ。教科書にも採用された著書『デジタルは人間を奪うのか』で人間とテクノロジーの未来を説き、『未来のためのあたたかい思考法』では寓話的に未来の思考法を示す。北海道大学客員教授として人工知能の研究も行っている。

テクノロジーを起点にして未来を提言する

未来のあり方を提言する「フューチャリスト」として、ぜひお伝えしたいことがあります。それは、未来は自らの手で明るくできる、ということです。

そもそもフューチャリストって何?と思われた方も多いのではないでしょうか。フューチャリストとは、多角的な観点から未来を考え、提言する人のことです。時に「未来予測家」と呼ばれたり、「未来学」とくくられたりもします。社会の変化が激しくて先が予測しづらい近年、フューチャリストの存在意義は高まっていて、アメリカではフューチャリストが名だたる企業に起用され経営戦略を担っています。

日本ではまだフューチャリストを起用する会社はほとんどありませんが、近い将来は“取締役フューチャリスト”のような形で、経営メンバーに加わることが普通になるのではないでしょうか。

ちなみに未来予測というと、よく○○総研や□□財団、シンクタンクなども未来を予測するレポートを出しますが、そうしたレポートの多くは調査や統計分析に基づいています。たとえば2030年には何歳以上の人が何人に達し、それにより経済はこう変わる、といったことですね。

フューチャリストにとってもそれは必要な手法ですが、バックボーンとしてのテクノロジーの存在感が増しており、専門知識として欠かせません。テクノロジーの進化をベースとし、それにより社会がどう変わっていくかを予測する。たとえば今年5Gの技術が商用化されることで、何年後にはIoTがこうなり、ロボティクスがこうなり、それにより医療はこう変わり、製薬はこうなる……といった形です。テクノロジーを起点に、さまざまなものを相関させながら未来をイメージ・予測していきます。

フューチャリストは、未来によりプロアクティブ(=積極的・先見的)にアプローチします。未来を提言するにあたっては、未来のイメージを言語化・物語化する必要も出てきます。だからテクノロジー起点とはいえ理系の要素だけでなく、社会、経済、歴史、哲学など文系の要素も必要になってきます。

 

子供の頃から「死ぬこと」がとても怖かった

なぜ私がフューチャリストになったかというと、幼少の頃から死生観がやたらと強かったことが大きなきっかけの一つになっています。小学校低学年の頃から、なぜか死ぬことがすごく怖かったのです。当時は1999年に地球は滅亡するという『ノストラダムスの大予言』が流行ったこともあり、20歳まで生きられないのではないかという思いがありました。そして死生観が強いあまりに、未来がどうなるのかということに関する感度が相当に過敏でした。

でもそうやって将来のことばかり考えているうちに、さまざまな情報を努めて得るようになり、知恵もついていったことで、根拠のないものや嘘も多いなということに気づきます。ノストラダムスの大予言に関しても、ある頃から、根拠が乏しいなと気づきました。そうするうちに、将来に対する恐れや死の恐怖は、大人になるにつれ客観的に見つめる対象となりました。

そして、こう実感します。やっぱり正確な情報や知識はとても大切だと。正しい情報や知識を得て、分析することで、将来に対する恐怖を解消することができる。さらには、正しい情報と分析をもとに対処する=行動することで、自分の未来を変えることもできる。それに気づいたことが、自分にとって大きな変革となりました。

たとえば、よくいわれる国民年金や国民健康保険など公的年金制度や国民皆保険制度がこのままもつのかという話。これも根拠のない情報ソースに振り回されると、大きな不安を感じたり、投げやりになってしまったりします。でも不安を感じる部分をきちんと学習することで、具体的にどんな問題があり、逆に何が問題ではないのかがわかる。正しい情報と分析をもとに問題に向き合い、対処することで、不安はなくなる。未来が変わる。

それが、自分の原初体験から導き出された、未来というものに対する“解”です。

 

正しい情報により「未来が創られる」ようになる

同じように、いま学生や若い人たちが抱える迷いも、情報と経験の不足によるところが大きいと思うのです。学校や会社の限られたソースによる根拠のない話に振り回されてしまっているケースが多いのではないかなと。多くの人が通る道でもある就職を切り口に見てみましょう。

たとえば、よく話題になる就職人気ランキング。それがきちんと統計を取ったものであっても、どういう前提でアンケートしたのかにより、意味合いはガラリと変わります。要は、自分の求める価値観が必ずしも反映されているとは限らない。そこの情報をきちんと押さえないと、不要なノイズに振り回されることになってしまいます。

就職先の選び方でも同じようなことがいえます。この研究室だったらこの会社かあの会社、こんなことをやりたいのだったらこの会社と、限られた場所での定石や特定の先輩の話に、杓子定規に従うことが未だに多いと思うのです。反対に、どうしてもこれがやりたいからあえてベンチャー企業にいくというような、他者とは違う自分ならではの選択肢は、まだまだ少ないのではないでしょうか。

そんなふうに少ない判断材料と経験に基づいて考えることで、表層的な情報に踊らされ、思考の深さが止まってしまう。なんとなくのムードに流されてしまう。それが不安や迷いを生む大きな要因になっていると思うのです。もちろん、就職先のミスマッチを生むことにもなるでしょう。だからこそ正しい情報を集め、知識をつけ、思考・分析する習慣をぜひ身につけてもらいたいなと思います。

その点、大学生には「特定の分野に特化した人たちが周りにたくさんいる」という大きな強みがあります。なぜそれが強みかというと、「○○のことだったら●●に聞く」といった人脈を作りやすいからです。先生でも学生でもいいので、そうやって各領域の専門家のネットワークをいくつも持っておけば、ネットニュースでは得られない生きた情報を常に得られるようになります。もちろん、社会人になってからもそうしたネットワークを作ることは可能です。

また、正しい判断をするには“脱・承認欲求”も大きなポイントとなります。SNSの普及で、いま多くの人が、いわゆる“映え”思考になっています。“映え”るからこれをしよう、就職先はなるべく“映え”る会社にしよう、等々です。そうやって承認欲求を満たそうとすることで、自分らしい判断や行動が妨げられてしまう。

それを改善するには、不特定多数からの承認を求めるのをやめることです。要は「いいね!」の数に依存しないこと。それにより、本当に自分に必要なものが見え、“自分のための人生”をおもいっきり生きられると思うのです。

アカデミックな知識をベースにし、世の中の根拠に乏しいふわっとした情報を整理できるようになることで、その先にある真相が見えてくる。だまされなくもなる。未来が明るいものになる。それはまさに、飛行機に乗っている時に分厚い雲を抜けて青空がパッと広がる、“雲抜け”の感覚にも近いのかなと思います。

 

未来を創る大きなカギは「あたたかさ」

そうして未来を作っていくうえで大きなカギとなるのが、「あたたかさ」です。あたたかさとはたとえば、愛する人と肌が触れ合った時の心地よさや、あたたかい飲み物を飲んだ時のほっこり感、紙の本の手触りや匂いに対する愛着、などです。

あたたかさとは一見感覚的なものに見えますが、実際にこのような行為を通し、脳が反応しているのです。例えば、オキシトシンは幸せホルモンとも呼ばれ、安心感や幸福感、物事に対する愛着を深める作用があります。人と人との関係の中にあるあたたかさには、なんとなくではなく、脳科学的な背景があります。

日本は、「おもてなし」という言葉もあるように、そうしたあたたかさを重視してきた国です。人工知能等の基礎研究の世界では今やアメリカや中国に大きく水をあけられ始めている側面もありますが、日本が得意とするあたたかさにウエイトを置き、テクノロジーとうまく掛け合わせることで、我々だからこそできることが十分にあると思います。

メッセージアプリとして今やインフラといってもいい、LINE。メッセージを速やかにやりとりできるツールであれば、LINE以前にもいろいろなものがありました。でも、あのゆるくて人間味のあるスタンプがあるために、他のツールを差し置いて爆発的に普及した。あのスタンプこそが分水嶺だったわけです。先端的技術力はさることながら、人間があたたかさを感じることこそが大きな力となります。

この先、生活におけるテクノロジーの比重がどんどん増していき、AI化やロボット化、無人化が進んでいくからこそ、逆説的にゆるさやあたたかさの価値がますます増していくと思います。もともと人間の身体は、あたたかさがないと耐えられない構造になっている。だから今後は、会社の人員の採り方も変わってくるかもしれない。人工知能の開発現場、人工知能が活躍する職場こそ、あたたかさの濃度が高い人に入ってもらおう、とかですね。

完璧を求め過ぎないことも、ある種のあたたかさといえます。いまSNSやメディアでは失敗が徹底的に叩かれ、多くの人が「いかに失敗しないか」に重きを置くようになっています。でも、そもそも人間は失敗するものであり、失敗から大きく学び、成長するものです。そうすることで大きな達成感や幸福感を覚える構造にもなっています。時に失敗からどう挽回したか、マイナスをどう克服したかという部分に、人は心を大きく動かされもします。

だから失敗=バグを忌み嫌わず、むしろ人間らしさとして楽しみ、大切にする。もちろんわざと失敗する必要は全くありませんが、失敗を恐れて縮こまらないこと、チャレンジをやめないことがとても重要になります。

テクノロジーが生活にどんどん侵食するからこそ、人間の身体の原理原則に目を向け、人間らしさや人間味を大切にする。そんなあたたかな思考法こそが、未来を真に明るいものとするのではないでしょうか。

※本記事は取材により得た情報を基に構成・執筆されたものであり、運営元の意見を代表するものではありません。

 

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