2025年問題って何?わたしたちが知っておくべき超高齢社会のこれから

はじめに

わたしたちが生きていく社会は、当然ながら、変化し続けています。

特に、このサイトを訪れてくれた方、また編集部員も、紛れもなく「未来」を生きる存在で、この先長く、社会と関わり続け、働いていくことになります。

だとすれば、自分たちが活動する社会はこれからどのように変わっていくのか、その理由と背景を知ることは、現在を知ることと同じように重要だと言えます。

中でも高齢化問題は、意識すべきテーマの1つです。すでに現在の日本は、世界保健機構(WHO)により “超” 高齢社会と分類されています。これはほとんどの国が経験したことのない段階で、誰も正しい対策を知りません。今、日本や世界が持つ課題の中で、最も大きなものと言っていいでしょう。

一方で、高齢化、ひいては人口構造の変化は、その他の未来予測とは異なり、大きな誤差なく未来の状態が予期できます。未来の人口構造は、現在の構造をほぼそのままスライドさせたものであり、統計から導き出せるものだからです。「間違いなくそうなる」という意味でも、知っておく価値があるテーマなのではないでしょうか。

また、『もしドラ』でも有名な経営学者のP.F. ドラッカーは、その著書の中で「(人口の変化は)重大な影響をもたらす。市場を変え、経済と社会を変える。変化はすでに起こってしまった」と記しています。

この重大な問題を自分たちの課題として捉え、その中で成長する産業についての理解を深めることは、これからの社会を生きていくうえで、欠かせない要素ではないでしょうか。

そのための第一歩として、「2025年問題」というキーワードを考えてみます。今後の高齢化社会について考え、未来を考えるきっかけにしていただければ幸いです。

 

“2025年” とは何か?

超高齢社会"2025年" とは何か?

まず、「2025年」とは、何を指しているのでしょうか?

これは今後の高齢化社会の動きを把握する上で欠かすことができない、重要な数字です。この成り立ちをひもといてみましょう。

まず、1950年頃に生まれた人を指して、「団塊の世代」と呼ぶことがあります。第二次世界大戦の末期から終結直後、いわゆるベビーブームで、たくさんの子どもが生まれました。そしてこの人たちが75歳になるのが、2025年。つまり、このベビーブームに生まれ、相対的に人口の多い世代が「後期高齢者*」となるのが、2025年なのです。

*日本の法律・法令では、65~74歳までを「高齢者」、75歳以上を「後期高齢者」と規定しています。

ちなみに、日本において、すでに2015年には、団塊の世代の人たちが高齢者と呼ばれる年齢に差しかかりました。この2015年も、日本の高齢化社会を考える上では、重要なポイントです。2015年までは高齢者人口が増加するスピードが大きな問題とされていました。しかし、2015年以降は高齢者人口の増加は比較的ゆるやかになり、代わって高齢化率の高さが問題となってきたのです。

平成18年に厚生労働省の委員会が発表したデータによれば、2025年には、高齢者人口は約3,500万人となり、高齢者人口の割合が人口全体の約30%に達することが予想されています。やや極端に言えば、これまでがピラミッド型の人口構造だったとすれば、それが逆ピラミッド型、逆三角形になるイメージです。

 

いったい何が “問題” なのか?

超高齢社会、いったい何が "問題" なのか?

続いて「問題」の方について考えてみます。

高齢化社会、超高齢化社会が招く大きな問題の1つとして、介護費用や医療費といった社会保障費の急増があげられます。

1965年ごろには、65歳以上の人が1人に対して、20歳から64歳までの人は9.1人という比率でした。多くの若い世代が1人の高齢者を支えていることから、当時の社会保障の形は「胴上げ型」と呼ばれています。

しかし時代が進むにつれて、高齢者と若い世代の比率は大きく変化しました。2012年には2人から4人の若い世代が1人の高齢者を支える、「騎馬戦型」の社会保障となっています。

この比率は今後もさらに変化する可能性が高く、2050年には1人か2人の若い世代が1人の高齢者を支える「肩車型」の社会保障へ移行すると考えられています。

こうした影響を緩和するための対策として、厚生労働省は医療・介護制度改革に取り組んでいます。

この制度改革では、「医療から介護」「施設から在宅」といった従来とは異なる形で充実したサービスを提供するために、2025年度を目標に地域包括による支援体制の確立を目指しています。しかし、「これで十分、みんなが不安なく暮らせるはず」とは、なかなか思えないのが現実ではないでしょうか。

 

成長が予想される産業とは?

高齢化の進行は、国内の産業にも影響をおよぼします。

高齢化は労働力の減少につながるため、総合的にみれば、国内の産業は衰退する可能性が高いと言えます。しかし、特定の産業に注目すると、今後の成長に期待がもてる分野も存在しているのです。

例えば、高齢化が進むと、高齢者が消費者としての存在感を増していくことになります。元気なお年寄りが増えることで、レジャーや旅行、スポーツを楽しみたいお年寄りの数も増加するでしょう。

また、1人暮らしのお年寄りの増加が予想されます。そのため、家電や住宅、食品といった分野では、1人暮らしに対応した商品やサービスが求められるようになります。こうしたニーズを満たすことによって、それに関わる産業は成長できる可能性が高くなるのです。

さらに直接的に高齢化の影響を受ける医療や介護といった業界は、成長の余地が十分にある分野と言えるでしょう。

あらためて言うまでもなく、高齢化の影響によって医薬品の需要は増加を続けています。さらには、医薬品の営業・販売といった業務を請け負うCSO(Contract Sales Organization・医薬品販売業務受託機関)のような、医療・製薬業界の周辺の産業も急速な成長をとげています。

厚生労働省が進める医療・介護制度改革においても、医療と介護のサービスの強化は重要な要素であると位置付けられており、数兆円の予算引き上げが決定しています。

医療分野では、「救急や手術といった高度な医療が可能な急性期病院の人員の増加」「在宅医療や訪問看護での、1日あたりの対応人数の拡大」が改革の要素として盛り込まれています。

介護分野においても、「介護人材の増加」や「小規模多機能型居住介護の増加」「グループホームの受け入れ人数の拡大」といった点での改正が目標に盛り込まれています。

こうした制度改正も、医療や介護といった分野への需要の増加につながります。

 

2025年問題で起こりうること

老いてゆく大都市圏

平成30年に内閣府が発表した、都道府県別の高齢化率のデータをみてみましょう。2018年の時点で最も高齢化率が高い都道府県は秋田県で36.4%、最も低い沖縄県では21.6%となっています。また今後高齢化率は、全ての都道府県で上昇するとみられています。2045年には全国的に高齢化率の伸びが顕著であり、二桁に近いポイントの伸びが予想されます。来たる2025年では、徐々にこの片鱗が見えてくると言えるでしょう。

(資料:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30 年推計)」をもとに作成。)

さらに、平成27(2015)年を基準年として、都市規模別に65歳以上人口の推移を見てみます。このデータを見ると、都市の規模が大きくなるほど65歳以上人口の伸びが大きくなるという指数が出ています。大都市部では2025年には110.6にこの指数が上がっており、その後も大都市では高齢化が顕著にみられるようになっていく見込みです。

(引用:内閣府|令和元年版高齢社会白書)

 

医療・介護の問題

医療の側面で2025年問題を考えてみましょう。団塊の世代が75才になる年である2025年。これは、医療・介護需要の最大化であると言われています。厚生労働省の推計では、国民医療費は2015年度の42.3兆円から、2025年度には1.4倍の57.8兆円に増加すると考えられています。このうち、65歳以上の高齢者の医療費は、23.5兆円から34.7兆円に1.5倍に増加する見込みで、医療費全体に占める割合も55%から60%に高まると考えられています。
国ではこの問題に対して、75歳以上の後期高齢者の窓口負担を今の原則1割から一定所得以上の人を対象に2割に引き上げる方針を打ち出しています。

そして、医療業界の需要と供給のバランスが崩れることも想定されます。病院・医師不足が深刻な問題になりうるのです。

また、介護の面で考えてみます。厚生労働省が発表した平均寿命と健康寿命の推移のグラフをみてみましょう。

(引用:厚生労働省|平均寿命と健康寿命の推移

 
2016年時点で、男性の平均寿命は80.98歳、健康寿命は72.14歳、女性の平均寿命は87.14歳、健康寿命は74.79歳となっています。平均寿命と健康寿命の差は男性で約8歳、女性で約12歳となっておりこの開きが、介護が必要な期間とみなされます。今後もこの開きは維持されていき、2025年には介護が必要なのに、適切な介護サービスが受けられない介護難民が増えていく見込みです。

国では、2025年を目処に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。2021年現在でも、全国の自治体で様々な取り組みが行われており、地域でますます活発な動きになっていくと考えられます。

介護を必要とせずに自立して行動できる「健康寿命」を伸ばすために日々の暮らしで健康に気を配るようにすることが大切です。そして、介護が必要となったときでも、自分自身で行えることを増やしていく努力をし続けることが大切です。

 

社会保障費の問題

社会保障は、年金、医療、介護、子ども・子育てなどの分野に分けられ、国の一般会計歳出の約1/3を占める最大の支出項目となっています(財務省HPより抜粋)。日本は、他国と比較しても急速に高齢化が進んでいるため、社会保障費が増え続け、税金や借金に頼る分も増えています。
国は現在、「社会保障と税の一体改革」を行っており、消費税率引上げによる増収分は全て社会保障に充て、「全世代型」の社会保障に転換する取り組みを行っています。

 

2025年問題に向けて、個人でできること

年金などのお金に関連する対策

老後の年金をあてにしていては怖いと考える方も多いはずです。「老後2000万円問題」が記憶に新しい方もいるかと思いますが、老後余裕のある生活を送るためには、可能な限り自分である程度の貯蓄をしておく必要があるでしょう。
なお、老後の資金問題に不安のある方、どうやって貯めたら良いか分からないという方は、お金のプロであるファイナンシャルプランナーにインタビューした下記の記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。

働いて稼ぐ。稼いだお金はどう使い、どう貯めて、どう増やす? お金と家計のプロが若い世代に伝える超実践的アドバイス

まとめ

よく企業の経営者が、「これから伸びる分野で勝負したほうが楽」という言い方をすることがあります。つまり、収縮していく市場で利益を出そうとするより、拡大していく事業環境のほうが経営的にはうまくいく、という経験則でしょう。

そのためには、社会の大きな流れである高齢化の影響を考慮し、今後の動向を分析することも、非常に大切なことです。

一方で、冒頭に書いた通り、社会は変化し続けるものです。未来予想はあくまで「予想」で、絶対はありません。日々、情報に対する感度を高く保ち、学び、また自らさまざまなことを経験し、動き、そして「未来を作り出す」ことが、わたしたちのすべきことと言えるかもしれません。

 

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