第3回 「聞く力」を高めるために学生時代から始められること

「聞く力」をテーマとする上阪徹さんの連載、第3回では、「聞く力」を習得するために学生時代に意識して行動すべきポイントを解説してもらいました。就活が始まるタイミングで「聞く力」を自分の武器とするには、普段から意識して行動することが大事なようです。

コミュニケーションにおいては「聞く力」が極めて重要、就活でも存分に活きてくる、という話をしてきましたが、第3回は、そんな「聞く力」を高めるために学生時代から始められることについて考えてみましょう。

 

「聞く力」の磨き方とは

「聞く力」の磨き方とは

「聞く力」の磨き方で、最もシンプルな方法がひとつあります。それは、身近なところで、コミュニケーションをして心地がよい人を観察してみる、というものです。話がうまい、という人はそうそういないかもしれませんが、聞き上手という人はそれなりにいるものです。例えば、どういうわけだかその人物といると、ついついいろんなことをしゃべってしまう。実はあちこちの友人や後輩が相談をしていたりした。しゃべっていて、とても心地がいい。とてもしゃべりやすい空気を持っている。そんな人物です。

これは友達に限りません。アルバイト先の人たち。親戚のおじさん、おばさん。よく行く飲食店のオーナーさん。コンビニや携帯電話ショップなどの店員さん……。大事なことは、「この人は聞き方がうまいかもしれないぞ」というアンテナをしっかり立てておくことです。そうでなければ、意外に意識できないものだからです。逆に、アンテナを立てておくと、「聞き方」がうまい人を見つけ出したり、出会えたりするのです。

そして見つけることができたなら、さてそういう人が、どんな姿勢や態度で相手の話を聞いているか、じっくり観察してみるのです。どうして、その友達と、あるいはその人とのコミュニケーションが心地良くなるのか。他の人と何が違うのか。必ず理由があるはずだからです。

 

聞き方がうまい人の聞くときの特徴や態度

私自身、毎日のようにインタビューに関わる仕事をしていますが、私は「この人は聞き方がうまそうだな」と思える人から、少しずつヒントをもらっています。

例えば、質問は短く、わかりやすい。難しい言葉は使わず、平易な言葉で質問する。シンプルな問いかけをはっきりと伝える。こちらの話を途中で遮ったりしないで、最後までしっかり聞く。その上で、返答をよこしてくれる。返答はまずは肯定から。否定的な返答を頭ごなしにしたりしない。……などが挙げられます。こうしていくと、実は「聞く力」を持っている人たちの特徴は、質問力や返答力だけではない、ということに気がつきました。重要なのは、聞く態度なのです。立ち居振る舞いの一つひとつが、聞く力を作っているのです。

聞き方がうまい人の聞くときの特徴や態度

例えば、何かを話したときの、うなずき方。うなずき一つとっても、話しているほうからすると、「この人はちゃんと聞いているのか?」という印象を知らず知らずのうちに持ってしまいます。聞き方がうまい人は、うなずきもうまいのです。

では、具体的にどうすればいいのか。それを観察するのです。私もずっと観察していましたが、こういう人が多いということに気づきました。例えば、きちんとこちらを向いて、しっかりと首を縦に振って、聞いているということを示してくれる。

さらに、姿勢はどうでしょうか。椅子に深く腰掛けて、胸を反るようにするのがいいのか。それとも浅く腰掛けて、背筋をピンと伸ばすのがいいのか。こういう細かいところを、ぜひチェックしてみてほしいのです。そして、それを参考にして、自分なりの「聞き方」を作っていく。こういうことは注意して観察して、自分なりに認識しなければできることではありません。しかし、意識さえしていれば、いろんなことは見えてくるのです。

優れた聞き方をする人を意識して観察してみると、「あ、これはダメな聞き方だな」ということも気になるようになっていきます。もし、自分が同じようなことをしてしまったら、相手からそういう印象で受け止められてしまうということです。

 

採用担当者が感じている学生の印象に対する本音

かつて、大手企業数社の採用面接を担当される方々に取材をして、学生の印象について話を聞いたことがありました。面接の受け答えで、どのようなところが特に気になったか、と。最も多かった指摘は「目線」でした。目線の印象が良くないと、やはり印象全体が悪くなってしまう、というのです。

こちらがしゃべっているときに、目線がキョロキョロとあちこちさまよってしまうと、実は印象はよくありません。なんだか挙動不審だな、話に興味がないのかな、ということにもなってしまいかねない。かといって、ずっと目線を飛ばされ続けてしまうのも、それはそれで疲れるものです。

人事部門の方々が特に気になると指摘していたのは、伏し目がちで目線を上げられない学生がいる、ということでした。相手の顔をきちんと見ることができないのでは、コミュニケーションは円滑にはいきません。ところが、それができない学生もいるというのです。

 

好印象を与える目線の置き方のコツ

では、どうすればいいか。実は私はインタビュー中の観察で、目線について好印象だった人たちのやり方を学ばせてもらうことができました。それは、3つほど目線を飛ばすポイントを作っておいて、その3つだけにときどき目線を飛ばすという方法です。そうすれば、キョロキョロ感がなく、しかも、ずっと目を合わすこともありません。

席に座ったら、まず目線を飛ばす3箇所を決めておきましょう。例えば、視界に入ってくる掛け時計、植栽のグリーン、さらにはテーブルの端。そして、相手の目を見ることを基本にしながら、この3つにときどき目を向けるのです。

これはあくまで、ひとつの方法です。自分なりの方法を見つけるためにも、「聞き方がうまいなぁ」という人のやり方を観察してみることです。そうすることで、自然な目線の置き方を学ぶことができます。「これは良さそうだな」と思ったら、真似をしてみるとよいのです。

 

大人と接する機会を増やし、自然なコミュニケーションを目指す

大人と接する機会を増やし、自然なコミュニケーションを目指す

もうひとつ、先の人事部門の方々が語っていた興味深い話がありました。面接というコミュニケーションでは、どんな学生が円滑に話を聞いたり、しゃべったりできていたか。それは「大人とのコミュニケーションがどれだけできていたか」ではないかと言われていたのです。

ここでいう大人とは、40代以上のいわゆる年配の社会人、という意味です。

就職の面接は、もちろん相手になるのは大人です。ここで、大人とのコミュニケーションに慣れていないと、面接はうまくいかないことが多い、というのです。

例えば、年齢や世代の垣根を越えた地域の集まりなどに参加したり、大人たちに交じってアルバイトをしているような学生は、大人と接することに違和感がありません。ところが、普段は同世代の学生としか付き合わない、という学生は大人とのコミュニケーションそのものに抵抗感が生まれてしまう。「聞く力」もなかなか発揮できないということです。

大人とのコミュニケーションに慣れておく。これは就活でも、「聞く力」においても重要なことなのです。

最後にひとつ、「聞く力」を高めるための、とっておきの方法をご紹介しておきましょう。それは端的に、どんなことにも好奇心を持つ、ということです。「これはなんだろう」「どうしてこうなるんだろう」「なぜそうなんだろう」……。こんなふうに、いろんなことに興味を持ち、疑問を持っていく。それはすなわち、質問をする力につながっていきます。これこそまさに「聞く力」。

実は興味関心こそ、「聞く力」の源泉なのです。これは、社会人になっても同じ。いつもいろいろなことを知りたいという思いが、「聞く力」を作っていくので、ぜひ覚えておいてもらえたら、と思います。

※本記事の内容は筆者個人の知識と経験に基づくものであり、運営元の意見を代表するものではありません。

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第4回 新社会人として、大きく差がつく「聞く力」

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第2回 就活で存分に生かせる「聞く力」!質問することで、人に何が伝わるか

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