理系の職種・職業を大研究。あなたの本当の適職とは?

 

はじめに

大学で学んだ専門分野を活かそうとする人が過半数を占める理系学生の就職。その中でも研究職や開発職が代表的ですが、もちろん理系ができる仕事はそれだけではありません。さらに理系と一口に言っても、人によって専門分野が全く違いますし、それぞれで進むべき業界や企業などの選択肢も違ってきます。また、専門分野以外での就職をする人も少なくありません。実際に、さまざまな業界・職種で理系出身者が活躍できるフィールドは数多くあります。

理系学生の方が学んできた事を活かして活躍できる職種をご紹介します。就活の参考になれば幸いです。

 

理系学生の活躍が期待できる職種

研究職

研究職とは実験・検証・評価などを通じて得られた技術・ノウハウを活かして世の中にない新たな製品を生み出す仕事です。定めたテーマに対して、充分に情報収集・調査をして、仮説を立て、その有効性を検討・立証したうえで製品化を目指します。研究は大きく分けると「基礎研究」と「応用研究」があり、「基礎研究」は、5〜10年先の実用化を見据えた先進的な技術開発に取り組むことで、新たなビジネスの種を生み出すことが目的となります。企業によっては大学や公的機関などと連携し、産学あるいは産学官共同でプロジェクトを進めているケースも少なくありません。一方、「応用研究」は基礎研究成果の活用や既存製品の品質・性能の向上を目指すための研究が中心となり、具体的な製品・サービスを世の中に送り出すことがミッションとなります。

 

設計(機械設計・回路設計)職

設計とは、自動車、家電、携帯電話、工作機械、IT機器など、社会にあるさまざまな機械製品を実際にカタチにしていく仕事です。機械製品はメカニクス(機械・機構)とエレクトロニクス(電子制御)に大別され、それぞれに設計職があります。量産品の製品の大きな流れは、大まかに言うと1.製品企画→2.設計(開発)→3.試作→4.テスト→5.生産技術→5.物流→6.販売と分類され、その中で、設計部門は1~4までの工程の中で製品企画との調整、検討を経てCADを使った設計業務を指します。電気機械、システムとの調整をとりながらの設計、実際に試作品を作成して性能、安全性等の確認する作業。そして量産前には生産技術との打ち合わせや調整まであり、事務的な仕事も少なくありません。経験を積むほどCADを使った設計よりも、打ち合わせや他の専門分野との調整が多くなってくるため、チームで成し遂げる一体感、達成感を味わえ、モノ作りの醍醐味が味わえる職種です。

 

生産技術職・品質管理職

生産技術職とは、モノづくりを進めるうえで、設計工程(計画)と、実際に「モノ」を作り出す工程(生産)を連携させ、製品を効率的に生産するための工程を考え具現化していく仕事です。研究開発、設計、および工場の製造部門のパイプ役として、業務の効率化・人員配置まで携わる幅広い工程に携わっていきます。また品質管理では、不良品がないか、トラブルを未然に防ぐために施策が守られているかなど、細かいことも見逃がさずに管理する重大な業務です。

このためこれらの職種では、モノ作りのプロセス全体を見渡せる俯瞰的に物事を捉える力、多くの人と携わりながら仕事を進められる調整力、「もっとこうしたらより良くなる」というような課題発見力も必要とされます。

 

技術営業・フィールドエンジニア

理系の技術や知識に基づいて、顧客(納入先・法人)に対して製品・技術に対するヒアリング・コンサルティングを行い、ニーズやトレンドを収集し、素材・原料や機械・設備を高い専門知識をもとに提案営業やアフターフォローしていく仕事です。お客様の製品に関する最新の情報をキャッチし、より良い開発のために提案をすることが必要で、営業でありながら製品の企画に携われるのが醍醐味です。また、専門性が必要なことと開発側の意図を理解する必要があることから、理系学生の採用を行っている企業が多いのも特徴です。取引先とのやり取りのみではなく、お客様の要望に応えられるような製品の開発ができないか、自社の研究開発部や企画部とやりとりを行うことも多い職種です。また、技術部門エンジニアと協力し新製品の提案や新規開発計画に関するリサーチに携わることもあります。このように多くの人と接し顧客意図を汲み取るコミュニケーション能力や課題解決力、技術知識、対人能力、ビジネス感覚と幅広いスキルが必要とされます。

 

システムエンジニア・プログラマー

ソフトウェアやアプリケーション、システムなどの、設計・開発・テストなど、システムを作るうえで土台となる設計部分に関わります。依頼主と「システムを通じて何を実現するのか」という要件定義を打ち合わせ、そのためにはどんなシステムにすべきかという基本設計、どんな機能を有するプログラムにするかという詳細設計を行います。さらに実際のプログラムを作成するプログラミング、想定通りに稼働するかどうかのテストを繰り返すなど、作業工程は幅広く、企業やプロジェクトによって携わる範囲もさまざまです。お客様の要望を形にするためのヒアリング能力や、進捗状況を伝えるプレゼン能力、プログラマーが設計しやすい設計書を作成する文章構成能力など、幅広い能力が求められます。また、システムはどのような業界でも必要なものなので、あらゆる業界の動向や専門知識を持つ必要もあります。

 

施工管理・設備工事

建設工事の現場監督として建物の電気設備や空調設備、セキュリティシステムなどの設備の取り付け工事を管理・監督するなど工事全体の管理をする仕事です。建築計画に基づいて、設計が行われ、適正な技術と部材で、必要な技術や部材の開発が完了した現場で工事を進め、経済的かつ安全に工事が行われるようにする責任があります。工程管理、品質管理、原価管理、安全管理など管理することは数多くあり、いかに納期内にプロジェクトを進めるか、利益を生み出せるように無駄を省けるかなど考えることがミッションとなります。規模の大きい建設物でも自分の裁量が大きいのでやりがいを感じられ自分にしか出来ないと言われるような仕事をするチャンスが多いこと、またチームで成し遂げる一体感、達成感を味わえるのも特徴です。

 

MR(医薬情報担当者)

医薬品を安全かつ効果的に使って治療ができるように、さまざまな情報提供を行う仕事です。製薬会社を代表して病院や医院を訪問し、医薬品の品質、有効性、安全性などに関する情報の提供、収集、伝達を主な業務として行い、自社の医薬品の効能・特質・投与や使用法に関する情報を、ドクターや医療スタッフ、薬剤師に伝えます。取り扱っている医薬品は、日々新しいものが開発・販売され、MRになったからには常に薬に関する勉強が必要となり、知識を磨くために奮闘することになります。医療者に対してより良い形で薬の提案をするためには、病気やケガに関する知識も欠かせません。こうした知識の習得が大変である一方で、探究心や向上心を持って仕事に向き合いたいという人にとっては、大きなやりがいを感じることができる職業だと言えます。

漠然と仕事をするのではなくて、特定の分野のスペシャリストとして自己研鑽に励みたいという思いがある人にとっては、生涯をかけて向き合うことができる仕事になるでしょう。

 

コンサルタント

「consult(相談する)」という言葉が語源となっているコンサルタントの仕事は、その言葉の通り、コンサルティングをサービスとして提供します。クライアントの問題点を発見・分析し、その課題を解決するための方法を考え、改善の手伝いやアドバイスを行うことが主な仕事内容です。扱う分野は多岐に渡っており、コンサルタントの持つ豊富な知識やノウハウに対する需要は高まっています。

コンサルタントが所属するコンサルティングファームは、企業のトップマネジメントに関わる戦略系、企業の幅広い領域が対象の総合系(会計系)、人・組織に焦点を当てた組織人事系、シンクタンク系など、取り扱う対象によって分類することができます。

 

技術系公務員

理系就職で注目が高まっているのが技術系公務員です。理系の知識を活かして国や地方のさまざまな政策の立案や実施・実行を担当する公務員の総称とされています。技術系公務員は、総合職と一般職に分けられており、総合職は理系の知識を活かしながら国の政策を作る仕事、一般職はその政策を実行していく仕事が中心となります。技術系公務員は業務内容別に「区分」が存在しているので、自分の専攻を活かした仕事に就くことができます。

●国家公務員・総合職(7区分)
・工学
・デジタル
・数理科学・物理・地球科学
・化学・生物・薬学
・農業科学・水産
・農業農村工学
・森林・自然環境

●国家公務員・一般職(9区分)
・機械
・デジタル・電気・電子
・建築
・土木
・化学
・物理
・農学
・農業農村工学
・林学

 

弁理士・知的財産系

特許権や商標権、意匠権といった「知的財産」を取り扱う専門職。自社やクライアントの知的財産権の適切な管理を行います。独自技術の特許権取得やライセンス管理、他社の特許を侵害していないか、自社の特許が他社に侵害されていないかなどといった調査も行います。

弁理士や知的財産部門の専門職として活躍する人たちは、さまざまな理系分野の出身者が多いです。中でも機械・電気系、情報系などの特許出願が多くなることが多いため、就活では両分野に特化している人のニーズが高いといえるでしょう。

 

専門分野以外にもたくさんのフィールドがある

これまでさまざまな職種を見てきたわけですが、いかがでしたでしょうか。自分自身の専攻の延長線上の職種もあれば、専攻以外の職種でも魅力を感じたものもあるかもしれません。

そう、理系学生の強みは、専門知識だけではありません。研究などを通して身につけた「論理的思考力」「数理能力」「データ分析・解析力」などの実践的な基礎的学力も強みとなります。実はこの強みを活かせば、専門分野外でも活躍できる業界や職種が数多くあります。実際、企業にとっても専門分野外の研究をしてきた学生を採用する事はメリットが多くあります。他分野の視点を取り入れる事で、新しい技術が開発されていくからです。例えば、応用物理学で学ぶ「量子論」「量子力学」は、物理学の専門分野に進まない限り活用できない学問のように思われます。しかし、ナノサイエンスやナノテクノロジーは医薬品や化粧品の新商品開発にも広く活用されています。物理学の基礎的な力を活用すれば、医薬品や化粧品メーカーでの商品開発といった進路選択があります。研究で培った専門知識を技術職や研究職で直接活かすのではなく、別の形で活用することで、職種の幅が広がるケースもあるのです。

学部別・理系学生が就く職業

理系学部には、実にさまざまな学部があります。各学部の学生が、主にどのような職業に就くのか、人気の業種や職業は何か。就活前の参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

▼理学部

自然科学全般を学び研究するための理学部は、研究対象が細胞レベルから宇宙レベルまでと広範囲。各々が専攻した分野を活かした就職先を希望する学生が多いことが特徴として挙げられます。
一番人気はメーカーへの就職です。化学メーカーをはじめ、電機メーカーや半導体メーカー、食品メーカーや薬品メーカーなどさまざまな企業があります。この企業で、新商品・新サービスの開発を行う研究職を希望する学生が多い傾向があります。また、プログラミングや数学・統計学の知識を活かしてIT業界を選び、エンジニアやデータサイエンティストを目指す学生も多く見受けられます。

 

▼工学部

私たちの生活に必要なものや仕組みを作ることを目的とし、その技術や知識を学ぶ工学部は、学んで身に付けた専門性が仕事に直結しやすい学部であると言えます。
やはり一番多い就職先は製造業だと言えるでしょう。自動車や飛行機・船・電車などの乗り物をはじめ、電子機器や精密機器、鉄鋼、半導体、化学素材など、エンジニアとして設計・開発を行う企業は人気が高い傾向にあります。
また、建築科や土木科などを専攻している学生は、資格を取って建築業界に進む人も多い傾向にあります。設計事務所やゼネコン、ハウスメーカー、不動産会社などで働きます。建築士をはじめ、設計士、インテリアコーディネーター、インテリアデザイナーなど、人気の職種がたくさんあります。
情報工学や電子電気系を専攻する学生には、IT業界が人気です。アプリ開発やWEB制作を行うシステムエンジニアやプログラマーなどの職種が人気です。

 

▼農学部

農業・林業・水産業・畜産業などに関わる、応用的な学問である農学部。農業に特化したイメージがあり、就職が難しいのでは?と思われがちですが、決してそのようなことはありません。農学部での学びは「SDGs」に通じるものが多く、活発に取り組んでいる企業からの需要が高まっていると言われています。
農学部の学生の就職先は、農家や農業研究者など、文字通り農業に携わる人が多い傾向にあります。農作物の生産技術の開発・向上など、専門知識を活かしながら、直接農業に関わる仕事です。
その他、食品メーカーや製薬会社などの企業で研究や開発などを行う職種に就く人も見られます。

 

▼医学部

医学を専門に学ぶ学科である医学部。国家試験をパスして医師免許を取得し、医者になる流れが最も一般的です。大半の学生が、卒業後は臨床医として病院などに就職することになりますが、病院以外の就職先がないわけではありません。
例えば、研究医として大学院修士課程や研究所・開発機関で研究に取り組む人や、医系技官という公務員になり厚生労働省で働く道もあります。

 

▼薬学部

薬に関するさまざまなことを学び、研究することを目的とした薬学部。基礎薬学と医療薬学・臨床薬学という2つの分野に大別されています。多くの学生が薬剤師国家試験に向けて学び、薬剤師免許を取得した後は、薬剤師として働くことになります。
病院や調剤薬局、ドラッグストアなどで働くイメージがありますが、薬学部で人気の高い就職先は製薬会社です。新薬メーカーを例に挙げると、薬の種を見出し、データをとって薬を作っていく「研究職」、研究職が作った薬が実際にヒトでも有効かつ安全か、臨床試験を行う「開発職」などに人気が集まります。また、一定数ではありますが、製品の安全性・有効性を調べるために、食品メーカーや化学メーカーに就職する薬学部学生も見られます。

あらゆる業界で求められていると言われる「IT人材」と理系学生

AIやビッグデータの活用、DX(デジタルトランスフォーメーション)などのキーワードは産業界全体の課題であるといえます。企業・産業のDX実現に向けて、デジタル人材の育成は必要不可欠となっています。

この状況に対応するのは、理系学生が中心、といえるのではないかと考えられます。

旧来の職業でいえばITエンジニアなどでしたが、むしろAIエンジニア、データサイエンティストといった職種はすでにメジャーになっています。今後は、これまでにない職種が現れるのでは、と予想されます。特にデータ処理や統計、シミュレーションなどを学んだ人は、IT業界のみならず、シンクタンクやコンサルティング、また金融などでも活躍の場があるでしょう。例えば、「アクチュアリー」「クオンツ」などは耳馴染みのない仕事ではありますが、理系学生にうってつけの仕事であるといえます。

▼アクチュアリー
確率・統計などの手法を用いて、保険料などを算出する数理分析のプロ。将来のリスクやさまざまな不確定要素を、確率論や統計学といった高度な数理的手法を駆使して、目に見える形に処理することを仕事とします。

▼クオンツ
一般的には「投資」に関するさまざまなリサーチを行う計量分析の専門家のことを「クオンツ」と呼びます。高度な数学的手法を用い市場を分析したり、金融商品や投資戦略の分析を行ったりします。

 

噂を検証①:理系学生が就職に有利って本当?

あなたは、このような噂話を聞いたことはありませんか。

「文系より、理系のほうが就職しやすい」
「就職には理系が有利」

実際のところはどうなのでしょうか。

そこで2021年卒の就職内定率から検証してみました。
就職内定率は、3月卒業時点で文系が96.2%、理系が95.8%と大きな差がないという調査結果が出ており、就職内定率には、文系・理系どちらであっても影響がないと言えるようです(就職みらい研究所|株式会社リクルート調べ)。
ではなぜこのような噂話が出回っているのでしょうか。

理系は「専門的分野を学んでいるため、文系と比較すると専門職への就職に強い」という特性があります。また、理系学生に限定した専門職種の採用活動が募集から内定までが早いため、理系学生は早い時期に内定をもらいやすい傾向にあります。
また、理系では学校宛に届いた「推薦応募」を利用するケースが文系よりも多いことも要因の一つのようです。
このような事象から、「理系は内定が出るのが早い」ため、「就職しやすい」と認知され、就職には理系が有利という噂が広まったと推測されます。

(引用:就職みらい研究所|株式会社リクルート)

 

噂を検証②:平均年収 理系or文系で有利不利はあるのか?

さらに、こういった噂話を聞いたことがありませんか。

「理系出身者と文系出身者では、理系出身者の方が年収が高い」

こちらについても検証してみました。

データは少し古いものになりますが、独立行政法人経済産業研究所が2011年3月に発表した「理系出身者と文系出身者の年収比較-JHPSデータに基づく分析結果-」によると、理系がやや高い、という記載があります。この調査の結果では、男性の場合、文系出身者の平均値が559.02万円(平均年齢46歳)で、理系出身者は600.99万円(平均年齢46歳)となっており、理系出身者の方が高くなっていることが示されました。また、文系出身者と理系出身者のデータを分離してそれぞれについて、重回帰分析によって年齢-所得プロファイルを計算した結果、理系出身者の方が文系出身者より、年齢の上昇と共に所得上昇の傾斜が大きくなっており、理系非国立出身者の所得は、文系出身者よりも、若年期では低くなっているものの、40歳以降では高くなることが示されました。

しかし、2003年に出版された『理系白書 この国を静かに支える人たち』(著:毎日新聞科学環境部)では、文系の方が生涯賃金が高いと書かれています。

上記の調査以降、この10年から20年の経営環境の変化は大きく変わりました。より多様な働き方やVUCAと呼ばれる変化する経営環境も考えると、理系・文系での収入の違いは、あまり問題にならないのかもしれません。

自分がやりたいことを大事にしてみてはいかがでしょうか。

最後に

理系の知識やこれまでの研究の経験を活かせる場所は、研究職や開発職だけではありません。研究分野だけに囚われるのではなく、自分の長所や短所、適性なども考慮したうえで、志望企業を選定することが重要です。大切なのは、固定観念を持たずに就職活動に臨むことです。

興味のある業界、能力を活かせる業界。

専門分野かどうかに関わらず、まずはしっかりと自己分析や企業研究を行い、自分が本当に就職してよかったと思える企業に出会えるよう就職活動を進めてください。

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