読書の技術カタログ〜本を読むために知っておきたい知識・テクニック〜

サイエンスシフト編集部では、大学生や若手社会人の皆さまに向けて、本を読むための知識やテクニックについて紹介してきました。
その読書に関する知識やテクニック、様々な情報をこちらの記事に集約させました。

読書について、役立つと感じてもらえることが1つでもあれば、ぜひ実践してみてくださいね。

本を読むとは

皆さんはどれくらい本を手に取り、読んでいるでしょうか。

日本では、年間に約72,000冊(※1)もの新刊が出ているそうです。文化庁が発表した『国語に関する世論調査(平成30年度版)』では、一ヶ月に読む本の冊数は?という問いに対し、全体の半数近くである47.3%が0冊と答えていました。この結果は、過去10年以上変わらない数値です。
(※1:総務省統計局)

しかし一方で、私たちはあらゆるきっかけで本を手に取ることがあります。授業や仕事に必要な本はもちろん、話題の書籍や人気の自己啓発本、好きな作家の新作、公開予定の映画やドラマの原作など、本を読むチャンスはたくさんあるといえます。特にサイエンスシフトの読者は、日常的に読書をされている方が多いかもしれません。

インターネットやSNSなど、様々な情報を簡単に得ることができる現代で、私たちはなぜ昔からある「本」を読むのでしょうか。

また、本はどう読むのがいいのでしょうか。

本や読書について、サイエンスシフト編集部がまとめました。ぜひご活用ください。

読書関連記事紹介/サイエンスシフトおすすめ記事

『読書』をテーマにした、様々な記事をご紹介します。

現代文の読み方をひもとく

『東大のディープな日本史』や、『「最速で考える力」を東大の現代文で手に入れる』(共に出版KADOKAWA)の著書で、現在は予備校・通信制高校などで講師をされている相澤理さんに、東大の現代文をテーマにご寄稿いただいた記事をご紹介します。現代文は、読んできちんと理解する「基礎」を体系づけた分野です。これを学ばない手はありません。
実際の現代文の問題を用いて、日本語を上手に処理する力を身につけていきます。

東大「現代文」の知識を仕事に生かす〜知識を身につけ本をきちんと読む方法【相澤理氏連載:第一回】

https://scienceshift.jp/blog/how-to-acquire-knowledge-and-read-books-properly-01

東大「現代文」の知識を仕事に生かす〜「幅の広い指示語」を理解する【相澤理氏連載:第二回】

https://scienceshift.jp/blog/how-to-acquire-knowledge-and-read-books-properly-02

東大「現代文」の知識を仕事に生かす〜〈具体〉と〈抽象〉の関係をとらえる【相澤理氏連載:第三回】

https://scienceshift.jp/blog/how-to-acquire-knowledge-and-read-books-properly-03

アカデミックな視点から読書を考える

『「読む」技術~速読・精読・味読の力をつける~』(光文社新書)や『リモートワークの日本語~最新オンライン仕事術~』(小学館新書)の著者で、国立国語研究所教授の石黒圭さんに、「読む技術」をテーマにご寄稿いただいた、【「読む技術」養成講座】。
文章を読む、という動作は、日常生活でも当たり前のように行っています。あまりにも自然に行なっているため、実は完璧に理解しているようで理解していない動作の一つではないでしょうか。
この「読む」ということを深掘りし、より良く読む方法を身につけるためのヒントになれば幸いです。

「読む技術」養成講座【第一回:精読…きちんと正確に読む】国立国語研究所教授・石黒圭氏寄稿

https://scienceshift.jp/blog/reading-skills-seminar-01

「読む技術」養成講座【第二回:速読…さくさく素早く読む】国立国語研究所教授・石黒圭氏寄稿

https://scienceshift.jp/blog/reading-skills-seminar-02

「読む技術」養成講座【第三回:熟読…じっくり深く読む】国立国語研究所教授・石黒圭氏寄稿

https://scienceshift.jp/blog/reading-skills-seminar-03

「調べる」に特化した読書術

『実践 自分で調べる技術』(岩波新書)の著者・上田昌文さんに、上田さんが実際に行っている読書術をご紹介いただいた本記事。
調べものをするときに、多くの本や論文を読むという人も多いでしょう。参考文献の量が多い場合は、その「読む」という行為がとても億劫に感じてしまうのではないでしょうか。
『調べるための読書術』があれば、その多くの文献を効率的に読み、調べることができます。ぜひ、この連載を通して、『調べるための読書術』を身につけてください。

調べるための読書術【第1章 読む前に】〜『実践 自分で調べる技術』著者・上田昌文氏寄稿〜

https://scienceshift.jp/blog/reading-for-research-01

調べるための読書術【第2章 読む時に】〜『実践 自分で調べる技術』著者・上田昌文氏寄稿〜

https://scienceshift.jp/blog/reading-for-research-02

調べるための読書術【第3章 読んだ後に】〜『実践 自分で調べる技術』著者・上田昌文氏寄稿〜

https://scienceshift.jp/blog/reading-for-research-03

読書の方法を考える/サイエンスシフトおすすめ書籍紹介

『読書』のテクニックは、サイエンスシフトが紹介したテクニック以外にも多数存在しています。読書にまつわるテクニックを紹介している書籍をいくつかご紹介します。

三色ボールペンで読む日本語 (角川文庫)

https://www.amazon.co.jp/dp/4043786018
本を読むときに、線を引いたり付箋を貼ったりする人も多いのではないでしょうか。この本では、青・赤・緑の三色ボールペンを使ったシンプルな読書法を紹介しています。
ただ読むだけでは受け身になってしまい、せっかくの読書もあなたの身につきません。脳を鍛えるトレーニングツールとして、最も簡単な読書術であると紹介されています。内容の理解と整理が同時にできる、三色ボールペン読書法、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

読書の技法(東洋経済新報社)

https://www.amazon.co.jp/dp/4492044698/
元外務省主任分析官・佐藤優さんの書籍。月に300冊、多いときで500冊を読む著者の読書の技法が紹介されています。
「本はどう読むか」「何を読めばいいか」「本はいつ、どこで読むか」の三部に別れており、様々な視点から佐藤流の読書術が展開されています。
教科書と参考書の使いこなし方は、学生のみならず、学び直したい社会人も必見です。

本を読む本(講談社学術文庫)

https://www.amazon.co.jp/dp/4061592998/
古典もご紹介しておきます。1940年にアメリカで刊行されて以来、世界各国で翻訳され読まれてきたこちらの書籍。その名の通り本を読むときの実践的な読み方が4つのレベルに分解され書かれています(初級読書→点検読書→分析読書→シントピカル読書)。
読書の面白さを再発見できる本であると言えます。

独学大全(ダイヤモンド社)

https://www.amazon.co.jp/dp/4478108536/
読書猿氏による「独学の方法」を完全網羅した1冊です。この本では、様々な独学の技法が55種紹介されているのですが、特に「読む」という章の項目が最も多く、著者がいかに「読む」に注力しているかが分かります。
788ページという分厚さに圧倒されますが(巷では「鈍器本」と呼ばれているそうです)、『この本は確かにあまり賢くなく、すぐに飽きるしあきらめてしまう人たちのために書かれた。(本書序文より)』というだけあって、独学を身に付けたいと考えている人には読みやすいものになっているのではないでしょうか。

批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)

https://www.amazon.co.jp/dp/4121017900/
小説やアニメ、マンガなどの物語が好きな方へ。本書は小説『フランケンシュタイン』を素材に、小説技法篇、批評理論篇の二部構成で書かれています。小説技法篇では、小説を買う際に用いられるテクニックについて、批評理論篇では、作品分析の方法論について解説されています。
小説がどう書かれ、それを私たち受け手がどう読み取るか。この本を読むことで作品理解が深まるので、アニメやマンガの考察にも用いることができます。

読書にまつわる疑問

読書会とは?何をするの?

読書会とは、集団で読書をしたり、読書に関するコミュニケーションを行うためのイベントを開催したりする活動の場、またはその集団を指すようです。
読書体験をたくさんの人と共有することのできる場所、という解釈になります。
大きく分けると『書籍紹介』『課題図書』の2パターンに分かれるようです。

●書籍紹介
参加者がテーマに合ったおすすめの本を紹介することを目的とした読書会です。自分の知らなかった本の存在を知ることができたり、たくさんの本好きさんと交流することができたりすることがメリットです。

●課題図書
課題図書を事前に読み、感想を話し合うことを目的とした読書会です。参加者は全員同じ本を読んでいるので、共感することはもちろん、自分とは異なる解釈を聞くことも、とてもためになるでしょう。

そのほか、朗読・読み聞かせなどの読書会もあるようです。

iPadを使った読書はどう?

本屋に行って、ニーズに合った本を探して買うという行為は、本が好きな人にとってはかけがえのない時間です。
一方で最近では、iPadやKindleなどのタブレットを用いて、電子書籍での読書をする方も多いのではないでしょうか。読みたい本を家にいながらさくっと購入し、すぐに読むことができるため、タブレットを使った読書は、忙しい現代人にとても向いているものである、と言えます。

それでは、iPadなどのタブレットを使った読書と、紙の本での読書はどちらが良いのでしょう。タブレット読書のメリット・デメリットをまとめてみたので、ぜひ参考にしてみてください。

●メリット

  • どこに居ても、すぐに買って読むことができる
  • 本を収納するスペースが不要なため、保管場所がいらない
  • 検索ができる
  • スマートフォンと比べると、一覧性・視認性が高く読みやすい(雑誌のデジタル版など)

●デメリット

  • 操作性の問題……紙のように、パラパラめくったり、指を挟んでおいたりできない
  • 一覧性の問題……大きめのタブレットでも、大判の書籍や雑誌よりは小さく、一度に見られる範囲が限定されてしまう

これ以外にも、理解度の違いや、言語能力への影響に関して言及されることもありますが、これは個人差も大きいようです。こうしたデジタルでの学習に関する現在の研究結果は、書籍『デジタルで変わる子どもたち──学習・言語能力の現在と未来』バトラー後藤裕子 ちくま新書 にまとまっています。

読書のアウトプットってどうするの?

Googleで「読書 アウトプット」と検索すると、約1,440,000件がヒットします。その記事のほとんどは、『読書はアウトプットをしないと意味がない』という、強い口調で論じられているものが多く目立ちます(中には、先ほど紹介した「独学大全」の読書猿さんが、そうではないと謳っている記事もありましたが…)。

サイエンスシフト編集部は『読書はアウトプットをしないと意味がない』と断言をすることはありませんが、ある程度アウトプットの練習をしておくことで、少なからず自身の力になるのではないかと考えます。読書から得た知識を、ぜひ自分のものにしてみてください。

読書のアウトプットはいくつか方法はありますが、『書く』『人に話す』『本の通りに行動してみる』などが挙げられます。『書く』もSNSを使ったり、読書ノートをつけてみたりと方法はいくつかありますので、自分に合ったものを探してみてください。

また、先ほど紹介した上田昌文さんの『調べるための読書術』第3章で、上田さんが行なっているアウトプット方法をご紹介いただいているので、参考にしてみてはいかがでしょうか。

調べるための読書術【第3章 読んだ後に】〜『実践 自分で調べる技術』著者・上田昌文氏寄稿〜

 

大学生が読むべき本って何?

一般的に、『時間のある学生時代、特に大学生こそ、本を読んで知識や教養を身につけておいた方が良い。』という人は多いです。「一理あるな」と思って、読書をしようと思う大学生もいると思います。

では実際にどのような本を読めば良いのでしょうか。

上田昌文さんの『調べるための読書術』第1章では、『ベストセラーに手を出すな。たくさんの本に一挙にふれることができる、書店、図書館、古本市となじみになろう。自分の問題意識やセンスに一番近い、信頼できる、本の案内人を見つけよう。』と話してくださいました。

今まで読む習慣のなかった人がやりがちな『手始めにベストセラーを読んでみる』という行為は、実はとても危険であるといえます。万人向けになっているがゆえに、あなたが本当に読みたい、知りたい内容であるかが定かではないからです。目次やまえがき・あとがき、本についている帯なども参考にして、『面白く』かつ『自分を鍛えてくれる』ような本を選ぶのがよいと思います。また、上に挙げた書籍でも、本の選び方について詳しく説明されています。

サイエンスシフトのTwitterでは毎月1〜2冊ほど書籍を紹介しているので、こちらも参考にしてもらえればと思います。サイエンスシフト読者の皆さまの『本の案内人』になれていたら幸いです。


 

「高速読書」ってなに?身につけ方は?

高速読書というワードを聞いたことがありますか。
『死ぬほど読めて忘れない高速読書(著:上岡正明/アスコム)』という本が出版され、話題になった読書の方法です。
高速読書は、『1冊を30分で3回読む』という方法を用います。

  • 1回目(15分):目的に合ったページに目印をつける。
  • 2回目(10分):目印をつけたページを中心に、思ったことを書き込む。
  • 3回目(5分):書き込み箇所を重点的に読み直す。時間に余裕があれば、アウトプット用にノートを作成するとよい。

インプットとアウトプットの高速サイクルを用いて、脳に定着させるという方法だそうです。脳科学の法則に基づいた読書法である高速読書、興味のある方はぜひ試してみてはいかがでしょうか。

 

読書に関連する情報まとめ

読書のツール、便利アイテムをご紹介

読書時間を快適に過ごすための読書グッズがたくさん販売されています。ここではあると便利なアイテムをいくつかご紹介します。

●ブックスタンド
手を使わずに本を読むことができるので、腕が疲れずに長時間本を読むことができます。
▼ブックスタンドおすすめはこちら

●読書用リング
親指に装着すると、しっかり本を開くことができるアイテムです。立ちながらの読書(通勤・通学時)などに重宝します。
▼読書用リングおすすめはこちら

●栞(しおり)
本に装着するだけで、読み途中のページがすぐ開けるタイプの栞が多数販売されています。うっかり閉じてしまった、がなくなりそうですね。
▼栞(しおり)おすすめはこちら

 

読書にオススメのWEBサービス

読書のアウトプットに最適なWEBサービスをご紹介します。

●読書メーター
https://bookmeter.com/

読んだページや冊数などの読書量をグラフにして読書記録を書いたり、全国の読書家さんとコミュニケーションをとることができたりするサービスです。

読書メーター:キャプチャー画面

 
●ブクログ
https://booklog.jp/

webやアプリで本棚をかんたんに作成して感想やレビューを書いたり、読書の管理・記録をしたりすることができます。

ブクログ:キャプチャー画面

 

図書館情報

読書をはじめるなら、まずは図書館に行ってみましょう。
図書館は、利用者の種別によって、下記のように分けられます。

  • 国立図書館(national library)
  • 公共図書館(public library)
  • 大学図書館(academic library)
  • 学校図書館(school library media center)
  • 専門図書館(special library)
  • その他の施設に設置される図書館

日本図書館協会が2020年に行った調査によると、公共図書館の総数は全国で3,316館、蔵書数は457,245,000点になります。

日本で一番大きな図書館は、ご存知『国立国会図書館』。国立国会図書館は原則、利用が満18歳以上で、閲覧のみ可能となっている図書館です。東京本館・関西館・国際子ども図書館があり、蔵書数は44,916,483点となっています(国内刊行物と外国刊行物の合計)。

実はこの記事を書くことをきっかけに、筆者も十数年振りに、地域の公共図書館に行ってみました。
久し振りの図書館。館内マップを頼りに本を探しはじめたのですが、本の多さに圧倒され、自力ではなかなか見つけられませんでした。でもすぐに司書さんに聞いたのでは、「お目当の本だけを見つけにきた」となってしまい、『本と出逢う体験』はできないのではないかと考え、30分近くかけて該当エリアの本を片っ端から開いてみることにしました。

結果、当初読みたいと思っていた本とは全く違う本を手に取っていたのですが、自分では想像していなかった出会い、体験ができた、と不思議な達成感を味わうことができたのです。ぜひ皆様も図書館に足を運び、本と出逢う体験をしてみてはいかがでしょうか。

もちろん、図書館は出会いのためだけではなく、調べるための拠点でもあります。図書館を「使い倒す」ためには、下記書籍が参考になります。

『図書館に訊け!』(ちくま新書):井上 真琴
https://www.amazon.co.jp/dp/448006186X

 

まとめ(サイエンスシフト編集部より)

読書の技術カタログいかがだったでしょうか?
サイエンスシフトの過去記事や編集部おすすめの書籍や技法を紹介しました。本との出逢いや読書を通じて、より充実した学生生活、社会人生活を送れることを願っています。

感想などあれば、サイエンスシフト編集部までぜひ聞かせてください。
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